YCC ヨコハマ創造都市センターでは、新たに実施する小規模な美術展覧会シリーズ「YCC Gallery」の第一弾として、若手画家として注目を浴びている内海聖史による展覧会「YCC Gallery 内海聖史 『遠くの絵画』」を開催いたします。筆や綿棒を用いて点描のように精緻に描かれる内海の絵画作品は、その色彩の美しさ、平面作品の枠組みを超えた深さと広がりに特徴がある作品です。虎ノ門ヒルズやパレスホテル東京など多くの公共空間にも展示されている正統派の絵画を制作しているのと同時に、展覧会では空間や、場の背景、仕組みなどと呼応する、絵画の枠組みにとらわれない実験的でユニークな作品を発表し続けています。今回のYCC Galleryでは、作家がYCC特有の展示空間と展示環境に合わせ、星型の変形キャンバスを用いて描かれた複数の油彩画から構成される新たに制作したユニークな絵画作品を展示します。是非、この機会にご高覧ください。
YCC Gallery SATOSHI UCHIUMI
YCC Gallery 内海聖史 「遠くの絵画」
会期:2017年2月20日(月)〜4月2日(日)
※終了しました。たくさんのご来場、ありがとうございました。
時間:11:00〜19:30(最終日は17:00まで)
場所:YCC ヨコハマ創造都市センター 1階ギャラリー
入場:無料
主催:YCC ヨコハマ創造都市センター(特定非営利活動法人 YCC)
後援:横浜市文化観光局
企画:長田哲征(YCC / offsociety inc.)
コーディネーション:長田哲征 / 岩澤夏帆 / 宇野好美(YCC)
グラフィックデザイン:ACTION DESIGN
撮影:加藤健
過去の作品
サムシンググレート(2011 ) / void+での展示風景 / Photo: Ken KATO
moon satellite (2016) / 茨城県北芸術祭での展示風景 / Photo: Ken KATO
今回の作品について、何となしに考えている事を記載します。
2011年、表参道にあるギャラリー、void+の個展「シンプルなゲーム」にて最初の星形作品を作成いたしました。 かなり完全なホワイトキューブである同ギャラリーの形から絵画の成り立ちを考えたところ、建築の基本単位である立方体が現在の絵画の基本的な形である四角形に通じている事に気がつき、「絵画に他の形を与えるとしたら?」という問いから、人類が四角以外に持っている形体として星形を選択してそれを絵画の形として提示いたしました。 星形を、建築から切り離した絵画の形として選択した場合、またそれを建築内に戻す際、多芒星型にして、その鋭角の数や長さを考慮する事で絵画の置かれる様々な状況に対応できるのではないかという考えから、4芒星と7芒星の5mの大型作品を作成し、2012年に代官山にあるギャラリー、アートフロントギャラリーでの個展「方円の器」にて発表しました。 それ以降は、絵画の別の側面からまた絵画を見直す作業をしていたので、星形からは離れていましたが、昨年2016年に茨城県北芸術祭にて星形作品を展示した際に再度見直す契機となり、今回、YCC Galleryにて発表するのは再考するちょうど良い機会かと思いました。
絵画はしばしば「光」を扱う表現だと認識される事が多いのですが、僕は絵画にとって「光」は存在の前提条件でありそれ自体を扱う物ではないと考えています。 それなので、物質としての色材である「絵の具」を扱う仕事として制作してきました。 それにより、その基底材となるパネルやキャンバスも、素材として扱ってきたのですが、今回はその光としての色彩について考えてみています。 光はそれを通るフィルターの形により目に見える形が変化します。 カメラのシャッターに使われる羽根の数によって光の形がかわったり、特殊なフィルターによってハート形の光が写った写真を見た事もあるかと思います。 一般に星と呼ばれる空に浮いている天体は、球型、またはそれに準ずる形をしています。 それが、恒星で自ら光を発してようが、惑星で間接的に照らされていようが、私たちの目には光の粒として届きます。 その光の粒は太古より「星形」として表現されます。 確かに、星を観ると、ギザギザの鋭角がある星形にみえるのですが、それはその光を見るフィルターとして、私たちの眼の中のレンズ(水晶体)に縫合線とよばれる縫い目の様な筋がある為に、そこを経由した光がギザギザに見えるようです。 縫合線の形は人によって違うので、そこを通った光の星形は個人個人別に見えています。 それなので、見えている星の形は誰もが違うという事になり、その星形は人間がそれぞれ身体として持っているものとなります。
そこで、また絵画の話へ戻ります。 絵画を光としてとらえますが、絵画はまた「絵画」と「鑑賞者」が「数センチから数十メートル以内の離れた所で対峙」するという逃れられない関係性があります。 一番多いのは1メートルほど離れて絵の前に立っている状態でしょうか。 その関係性では、物質としての絵画がとても強いと思いますので、その絵画と対峙している関係性のままで絵画が何万光年も離れて光のみが抽出できるように輝くとします。 「鑑賞者と絵が1メートル離れた関係性を保ったまま絵画のみが数万光年離れて輝いている」という状況です。ちょっと言葉にすると意味がわからないと思うのですが、そうなると、たぶん、その絵画は各々の眼を通して星形になるのではないかと考えます。 今見ている1メートル先の絵画は、数万光年先の絵画なのです。
そんな事を言っていると、僕の顔も道行く車も風景もすべて星になってしまうのですが、絵画は絵空事と思って寛容に見てください。
サメとイルカが別の種類なのに同じ様な形になるような進化を収斂進化(しゅうれんしんか)と言います。 個人的には、同じような形体の作品なのに、おのおの別々のそこに至る道程を辿っていて、改めて絵画を描く事って面白いなぁと感じています。
内海聖史
Photo by Ken KATO
1977年茨城県生まれ。2002年多摩美術大学大学院美術研究科修了。現代の抽象絵画界を牽引する若手世代の旗手。絵画の美しさは絵具の美しさだと考え、筆や綿棒を使ってドットを何層にも塗り重ねることで、色鮮やかな絵画を制作する。空間に応じて絵画と鑑賞者との関係性を模索し、多様なスケールで絵画の新たな可能性を探る。「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」、「6つの個展2015」茨城県近代美術館など多数の展覧会経験に加え、東京都現代美術館収蔵やパレスホテル東京など、パブリックコレクション、公共空間での展示も多数。
内海聖史
SATOSHI UCHIUMI
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